藍染×一護 A

□誕生日・現世
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明日に向けて何もすることはなく、部屋で時計を見つめていた。
はぁ今日で一つ年を取るのか…。

老化していく体を持つ自分と、老化しないあの人。
誕生日というものが、この差を明確なものにしている。
老いさらばえていく俺を愛してくれるだろうかと…苦悩はこぼれ落ちるばかりだ。

死んだとして、魂が破面にしてもらえるかもわからない。
偶に交わされる逢瀬以外、信じることのできるものもない。
ただ己は無為に時間を浪費していないだろうか…。
時計を見やるとすでに後10分で誕生日を迎えてしまう。

もしも、もしもあの人が祝ってくれたら又違うのだろうか。
いや…そんな我が儘は言ってはいけない。あの人は今とても忙しいんだから。
時計を見つめてため息をつく。

すでに時計は回り、後一分で誕生日だ。
きっと明日になれば思春期の男には少し恥ずかしい家族の誕生日会が待っているのだろう。チャド達が何かしていたから、おめでとうくらいは言ってくれるだろう。
欲しいものは違うのに。
欲しいのは唯一人の笑顔なのに。
一人でベットの上でおこなうカウントダウン。
時計がカチコチ鳴る。






「誕生日おめでとう一護」

抱えきれないほどの薔薇の花束を持ち、気配を感じさせずに部屋に侵入した恋人。

「なんで?」

「恋人の誕生日を忘れるほど、野暮ではないよ」

突然の訪問に視界が潤む。
部屋に立ち込める花の香が、二人を包み込んでいる。

「そうっすけ?」

「ん?なんだい」

「忙しいはずじゃぁ」

「一護より大切なものなんてないよ」

はいと手渡される花束。
棘が綺麗に抜かれたそれはとても美しく咲き誇っている。

「さぁどこに行こうか」

愛しい人の手をとると、深夜の街へと飛び出した。
二人を隔てるものはなにもない。

そして、一護はもうここには帰ってこなかった…

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