story
□幸せな家庭
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泣き声
「ちょっと!お兄ちゃん!」
弾を込めてみてわかった。僕は銃を撃つことはできない、目の前の妹を僕は撃てないだろう。
「冗談だよ、お父さんがもうすぐ帰ってくるから、もしもの時のためだよ。」
その、もしもの時が来ても僕は父を撃てないんだろうが…。
妹と話をしてみてわかった、妹も長い間つらかったんだ。僕は間違っていた、父をこのままにしておいたらまた同じことが繰り返されてしまう。妹の言うように父にはやっぱり、捕まってもらおう。
「ちょっと警察に連絡してくるよ。」
家に警察を呼んだ。長かった、もうこれで月明りの下で夢を見なくてすむのかと思うと、自然に涙が出てきた。
インターフォンがなる。警察が到着するには早すぎる気もするが、門を映した小さな画面を見ると、画面いっぱいに警察手帳が見えている、ほかには何も見えない。僕は腹に銃を隠し玄関に妹を連れて行った。
「だいじょうぶ?」
「ああ、だいじょうぶだ。心配するな。お前は玄関にいろ。」
玄関のドアを開けると、誰もいなく、門の向こうに何か落ちていた。黒くて少しだけ光っている、あれは今日の朝、父が持って行ったカバンだ。
すぐに門の前まできたとき、風が吹いてカバンの中に入っていた父の書類が飛んだ。そして僕は何かを両足で踏んでいた。
父の小さな背中だった。
後ろから叫び声が聞こえ、振り返ると黒い覆面をした男が妹を捕まえていた。
妹の首にはナイフがあてられていて、先端から赤い血が流れている。そして妹に何か言っている。
「お兄ちゃん、ふ、袋はどこだ?って…。」
袋?紙袋の事か?
「紙袋か?」
そう言うと男はだまってうなずき、こっちに来いと手招きをした。
僕は父の背中から降りて、腹に隠した銃を男に見せた。すると男はさらに深くナイフつきたてて手招きをした。
「お兄ちゃん、痛い…。」
悲痛な声だ。胸が苦しい。もうやめてくれ、早く妹を離してくれ、これからやっと幸せに生きられるんだ。邪魔はしないでくれ。
僕は銃を両手で持ち、妹にナイフをつきたてている覆面の男を……………。
覆面の男を撃ってしまった。
撃てるなんて思わなかった、威嚇のつもりだった。覆面の男が後ろに倒れて僕はすぐに銃をその場に捨てた。
それと同時に道路に赤いランプの消えたパトカーが停まった、昼間に見た臭い息の男ともう1人が、パトカーから降りてきた。
そして僕は、2人がかりではがいじめにされた。
妹の泣き声がする、妹が泣いている。
「妹が泣いてるんだ!離せよ!」
もがいた、こんなに自分に力があるなんて思わなかった、はがいじめにされた腕をふりほどき、妹にかけよった。
僕は妹の幸せを喜んで、声をあげて泣いた。