企画物/頂き物2

□5.彼女は、きっと、空のむこう
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僕たちが出会ったのはつい最近。だけど昔からいる友達みたいに仲良くなって、いるのが当たり前のようになっていた。大切でかけがえのない存在だけど、それを忘れてしまっていた。



彼女が遠くへ行ってしまうと分かったのは昨日のこと。
僕は一昨日から機嫌が悪くて、彼女に八つ当たり気味に接していた。
それを呆れながらも黙って付き合ってくれた彼女に感謝しながら、心のどこかでなんで怒らないんだと思っていた。
そんな彼女から聞いた別れの言葉は、たぶん一生忘れない。


「冗談だろ?」
「ううん、ほんとう」
「なんで、そんな急に」
「お父さんの仕事の都合で…私もびっくりした」


あはは、と小さく笑い声をあげて。
まだ混乱している僕にやだなぁとつぶやいた。


「変な顔〜」
「…茶化すなよ」
「だって、変な顔なんだもん。らしくないよ!」
「仕方ないだろ!」


思わず声を荒げてしまった。
怒鳴るつもりはなかった。
ただいつも通りにしようとする素振りが悲しくて、痛くて。


「ほんとに、ほんとなのか?」
「ほんとに、ほんとだよ」


ちくしょう、と口内でつぶやく。
何も知らなかった自分が悔しい。

きっと、眉を下げていたんだろう。
僕の顔を見て困ったように頬をかいた。


「もう行かなきゃ」
「…うん」
「元気にしてなきゃぶっ飛ばすからね」
「…うん」
「…っもう!最後にそんな顔見せないでよ!」
「最後とか言うなよ!」
「最後なんだから仕方ないじゃない!」


なんで、言い争っているんだろう。
頭の片隅でそう思ったけど、じゃあ止められるかと言われれば、否。
泣きそうな顔で叫ぶ彼女に、ちり、と胸が痛んだ。


「会いにいく!絶対だ!」
「嘘つき!絶対なんて言わないで!」
「約束する。必ずまた、会える。絶対!」


絶対。
幾度となく約束を破った僕だけど、これだけは守り抜く。
もう、彼女にそんな顔をしてほしくない。


「うそつき…バカァ」
「信じなくていい。勝手に会いにいくよ」
「信じろって言えばいいのに…」


ばぁか、と大声で言ったかと思うと、強い力で肩を叩かれた。
バシン、といい音がして、イテェ!と声をあげる。


「また、ね。絶対また会おうね」
「謝らないのかよ!つか唐突すぎんだよアホ!」
「んなっ!人が可愛らしく挨拶してやってるのに!」
「可愛くもなんともない!自分で言うなよ」
「いいじゃない誰も言ってくれないんだから!」
「次会ったときに言ってやるよ。可哀相だから」
「結構ですー」


それから、二人で笑った。
いつかまた会うその時も、きっと今のように笑えるから。




She is surely the other side of the sky.
(彼女は、きっと、空のむこう)






(そして僕は、彼女の手をとる。)

END.



******************

霧宮イサノ様から頂きました☆

と、ときめきってこの小説のことを言うんですね!?(笑)あぁ〜もう胸がキュンキュンします〜><*
男の子と女の子の会話が微笑ましくて少し切なくて、でもきっと素敵な未来が二人にはあって…とてもあったかい気持ちになりましたv
こんな少女漫画があったら買いにいきます!

私なぞの企画に参加して頂き、そしてときめく素敵小説を書いて下さり本当にありがとうございました!!!

なお、3周年企画での作品のお持ち帰りはご遠慮下さいませ。



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