僕の天使(WEB拍手SS)

□僕の天使4 レイの苦悩
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+僕の天使+
〜レイの苦悩



「天使ねぇ……」

そう呟きながら、そのピンク色の可憐な唇から春の息吹のような吐息を漏らした。

その途端、キラとそのキラのマネージャーであるレイが、休憩と称しお茶をしているこのカフェテリアの従業員が二人、目をハートにして倒れた。
愛らしい顔に華奢な体躯。人気bPアイドル・キラの周りでは良くあることだ。

その様子を横目で見ながら、持っていたエスプレッソを一口飲むとレイはキラに視線を移した。

「天使が何か?」

「あ、うん。
この間のオーブテレビ局にいた出待ちの彼がさぁ…」

「あのストーカーっぽい奴の事は忘れろ。全力で脳内から消去しろ。」

キラの言葉を最後まで言わさず、レイは心底嫌そうな顔でウンザリと告げる。

脳裏では先日の場面がVTRのように細かく映し出された。

ボサボサの肩にかかる長い藍髪にブ厚い眼鏡。
お洒落とは無縁だろう服装に挙動不審な態度。
その胡散臭さ満天な男がキラに近寄った瞬間、レイの頭に警笛が鳴り響いた。


「好きですッッッ!!!!!」
「俺の天使ッ!!!!!!!」


怒涛の告白に眩暈さえした。

キラのマネージャー兼ボディガードであるレイは、加速装置ばりの瞬間移動でキラを安全な場所に避難させると、すぐさま警備の人間を呼び出し男をテレビ局の敷地から追い出した。

このような度を越したファンは売れっ子アイドルのキラならば当然の事なのかもしれないが、これから益々増えていくのだろうと頭が痛くなる思いだ。

出待ちのファンはまだ可愛いものだ。だが虚像でしかない『アイドル』をもっと身近に感じたくなり、アイドルのプライベートにまで干渉したくなったり、そのアイドルと恋愛が出来るのでは勘違いしたりと段々と症状はひどくなる者もいる。
脅迫めいた手紙やメール、自宅を探し出して家族にまで被害を及ぼしたりと手段はエスカレートしていく。
届くことのない想いは歪な愛の形となってアイドルを襲う。

そのような悪質なファンをレイは沢山知っていた。
一部のファンのせいでこの芸能界を去った者だって少なくないのだ。

応援する立場のファンが逆に追い詰め破滅させる。
それはキラだって同じだ。

キラの所属する事務所の社長でもあり、レイの養父のギルバートからはキラのマネージャーになる前に念入りに説明をされた。
事務所を背負って立つと見込まれたキラを守る為。


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