小説 モノスペース
□モノスペース 本編
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遭難 三十七日目
イリサの寝不足は増長している。
無理も無い。訳の分からないモノと対面する羽目になったのだから。
日が暮れて、夕飯もそこそこに、イリサは自室へと戻った。
男は夕飯を共にせず、灯台へと戻って行った。いつも通り、ラナンキュラスと二人だけの夕食。
めずらしく感情を威勢良く吐き出したラナンキュラス。相変わらずの食欲に、イリサはたじたじとなる。
(今日の事は何だったんだろう。)
素直にそう問い質せないもどかしさ。
イリサは味見はした料理を、旨いとも不味いとも感じず、ただ口に放り込んだ。
部屋に戻ったイリサがベッドに腰を下ろしてすぐ、ギーッと戸口を開く音がした。
ラナンキュラスが灯台へ仕事をしに出かけたのだ。という事は、灯台守の仕事は復帰するという事だ。
(今まで仕事を任せていた彼のことはどうするのだろう…。)
居座ると言っていた。…長い付き合いになるにだろう。
(ラナンは灯台へ仕事へ行く。その度に彼と会うことになるんだ。)
ピリピリとした二人の間の空気を思い出して、イリサは悪寒を払いのける様にベッドにゴロゴロと横になった。
(何があった…聞くのが間違っているのだろうか。)