小説 モノスペース

□モノスペース 本編
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「…どんな人だったの?」

 イリサが躊躇いがちに、小さく呟く。

「変な人。灯台守の仕事に対して、まるで執着心がなかった。成り行きで、灯台守をやってたのよ。なのに、死ぬ間際になっても、私に仕事を譲らない頑固な人だったよ。」
「それって十分執着してるんじゃ?」
「彼が灯台守をやっていたのは、別の理由があるような気がしてたよ。その理由の為に、灯台守じゃなきゃいけなかった、そんな感じね。」
「じゃぁ、好きでもないことをしてたってこと?」
「そうじゃないのかしら。死んだからもう分かんないわ。」
「…ということは、話からしてラナンも灯台守になって、大して長くないんじゃないの?」
「見習い期間だけは人一倍長いけどね。灯台守になりにここへ来たのに、いつまでもあいつが粘るから。ったく、さっさと譲れば良かったのよ。」
「あんたが早く譲りすぎなんだよ。」
「あら、まだ譲った覚えはないわよ。」
「でも、譲る気満々でしょ。だいたい…何で灯台守になろうと思ったの?」
「天職だからよ。」
「だから…。」

いつものラナンキュラスの笑みを見て、イリサはそれ以上言うのは無駄だと悟った。




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