小説 モノスペース

□モノスペース 本編
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遭難 四十日目


 パリンという割れる音。
ラナンキュラスには予知出来なかった事に、少々慌てて外を見た。
室内に比べて強い光がラナンキュラスの視界を包み込む、はずだった。
見えていたのは薄暗い、わずかに光が射した部屋の中だった。
昨日の夢を見ていたのだ。

(夢にまで見る事かしら…。)

 そう思いながらも、少なからずラナンキュラスには衝撃的な出来事だった。
 夜明けだと悟ったラナンキュラスはベッドから体を起こす。
適当な服に着替え、灯台へ行く準備をする。
そんな時、ゴトンと何かが落ちる音がした。
上着を引っ掛けたらしい、部屋の机の上に置いてあったはずの大きなガラス玉が床に転がっていた。
 急な出来事にはさらに緊張が増す。
恐る恐る、ラナンキュラスはしゃがんで拾う。
それは、ラナンキュラスの過去の遺物だ。
今の自分にはもはや不必要な物だ。
ずっしりとした重みを感じながら、ラナンキュラスは自分の人生を振り返っていた。

「もう、いらないのよね…。」

 ガラス玉を持ったまま、ラナンキュラスは部屋を出る。
とりあえずテーブルの上に置くと、灯台へと出かけて行った。




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