小説 モノスペース
□モノスペース 本編
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心の丈を言うというのは、非常に難しい事だ。
これが後悔というのもか、ラナンキュラスは自分の気持ちを心の中で反芻した。
ラナンキュラスにとって未来が無くなった訳ではない。
でも過去を反芻するのは非常におかしな気分だった。
「…未来へ進む道を失えば、私は過去に帰れるだろうか?」
思わず、ラナンキュラスの言葉が漏れていた。
「立ち往生するだけじゃないの?」
「…ダメかしら?行き先は決めてあるんだ。」
「ダメと言って、ラナンは納得できるの?」
「そうね。…出来ないわ。」
イリサの言葉は真っ当だった。
(でも、私は…。)
こんな苦しい思いしたことなかった。
未来は当然の様にラナンキュラスの未来を示し続けていたのだから。
「いつもいつも、未来を見ていた。」
「それって、前向きってこと?」
「…驚いたわ。」
「何が?」
「そこまで前向きに考えたこと無かった。」
「悪かったね。」
未来への行先は知る由もない。
「未来が見えなければこんなにも、何でも出来る気がするのに、結局何も出来ないの。臆病なのね。」
そう、ラナンキュラスは悟った。
「…朝食にはまだ早い時間だけど?」
「物音がしたのが気になって、目が覚めた。」
「ああ。そう。」
おそらくガラス玉を落とした音だろう。
ラナンキュラスは少しばかり申し訳ない気分になった。