小説 モノスペース
□モノスペース 本編
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遭難 四十一日目
「そういやさっき、崖の方で人を見かけたんだが、お客さん?」
何気なく発せられたジュゴの言葉に、ラナンキュラスとイリサは手を止めた。
「いや、今日は…。」
「お客さんなんて来てないわ。」
「そうか…じゃぁ、アレかなぁ。」
ガタンと音を立てて、ラナンキュラスは慌てて立ち上がった。
「何で来てすぐに言わないのよ!」
「アレって?」
「自殺志願者よ!」
「自殺志願者!?」
ガタッと飛び上がるようにイリサも立ち上がる。
ラナンキュラスは上着も着ずに外へ飛び出して行った。
イリサは立ち上がったものの、勝手が分からずそのまま立ち尽くす。
「自殺行為を止めるのも灯台守の仕事だよ、見習い君。」
「見習ってないよ!って、ホントに来るんだ…。」
「減っただけで、来るものは来るよ。来訪者の調査するのも灯台守の責務さ。」
「だから、見習ってないってば。」
5分ほどして、ラナンキュラスが小屋に戻ってきた、が落ち着いている場合ではないらしい。
荒々しく息を立てて、肩を上下させていた。
「私じゃらちがあかないわ。」
「え?自殺志願者、居たの?」
「イリサ、あんた行ってきて。」
「はぁ?僕が?」
「いいから、行ってここまで連れてきて。」