小説 モノスペース
□モノスペース 本編
47ページ/59ページ
「おお。パンケーキときたか。これまた批評しようがない料理。」
「文句があるなら食べなきゃいいのよ。」
「文句のつけようがないってことだよ。」
ジュゴも自分の席に着く。
食事の挨拶もそこそこにジュゴはナイフとフォークを構える。
「…お願いだから、イリサを困らせる発言は控えて欲しいわ。」
「私はせっかちではないけれど、いつまでも待てるほど寛大ではないよ。ラナンこそ、どうして彼をかばい続けるのかい?」
正直、忌まわしかった。
でも、うしろめたさもあった。
「ナゼかしら。私には言えないわ、ジュゴ。」
ナイフらを手に取らず置いたまま、ラナンキュラスはため息をついた。
「未来が怖いのかい?」
「…そうなのかしら。」
「君にとっては、遥か前から憧れた生活をしてるんじゃないのかい?」
「…想い続けた結果がこれということかしら?」
「そんなに悩むなら彼に話してみればいいじゃないか。」
ラナンキュラスは黙り込む。確かに結論が欲しい。
でもそれは、イリサを傷つけたりはしないか?
「一種の起爆剤になってるのかもしれない。」
ジュゴは、事のいきさつを楽しんでいる様にも感じる。
「君は私の苗木を外に放り出した。変化を求めてる証拠じゃないかい?」
「それは…。」
それでも、ジュゴの言葉は的を得てる気がする。
「あれはね、私が苗から育てたんだよ。」
「え?」
「私は鉢植えの樹木のようだ。許容を超えて死んでゆく。そう、存在さえも危うい。」
ラナンキュラスはそれ以上答えられなかった。
想いの力が強すぎて…なんでこんなことになってしまったのだろう。