小説 雨

□[雨]
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「・・・・・死んじゃうの?」
「・・・らしい。この後は見たことが無いから。」
「じゃぁ、どうして二人はどっちかが死ぬ事を知ってたの?」
「・・・・・・さぁ。勘、かな。双子だし、何かお互いに感じるモノがあったのかも。」
「双子はどんな夢見ていたんだ?」
「双子が、見ていた夢?」
「うんうん。」
「そうだな・・・夢の中で二人とも、一人の男になっていた。」
「夢の中の双子は、次は二人とも夢で男になるわけ?」
「ああ。・・・おかしな夢で、男は毎日丘を登って買い物に行くんだ。毎日、毎日、同じ物を買いに。買い物のリストは、ミルクにキャベツと人参に・・・白身魚。」
「・・・スープの材料かな?グラタン?」
「買い物の最後に、男は必ず魚屋に寄るんだ。」
 あれ?と、何かが胸に詰まった。なんだか自分の言っている事がおかしく感じる。
「男は、魚屋と記憶にも残らないような他愛ない会話を交わし、帰路につく。・・・帰り道を急ぐ途中でいつも目が覚めるんだ。」
「なんか・・・それって・・・・。」
 金物屋が私と同じ嫌な感覚を感じたのか、最後まで言い切らずに言葉を濁らせた。
私も気付かないフリをした。
「何か、変だな。」
 そう、自分で言い切ってみた。その方が、後からいろいろと考えずに済みそうだったから。
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