神子

□2章 神子
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 瑠璃の部屋には甘くておいしそうな匂いが漂ってきた。

「サラ…これは…?」

 瑠璃がそういと、サラは得意そうに胸をはり、

「サラ特性のフィラですわ、私しかしらない調味料を混ぜてますの、きっとルリ様のお口にもあいます!」

 どこからその根拠がくるのか瑠璃にはわからなかったが、未知の色をしたお菓子をどうしても美味しいとは思えず、二の足を踏んでいた。

「…サラが作ったお菓子は食べたくはない…ですか…?」

 最後のほうはすごく悲しそうに消え入りそうな声で、瑠璃は慌てて首を横に振った。

「ちがう!!サラのお菓子スッゴク美味い!」

 サラもマリーナも大きな声を上げた瑠璃をビックリしたような顔でみていた。

 普段は、小さな声で話す瑠璃からは到底想像できない姿だった。

 その姿は、必死に違うと否定していて、思わず声をあげてしまったという感じだった。

 当の本人もあまりの声の大きさに驚いていた。

「…ルリ様…」
「あっ…ごめんなさい…」

 瑠璃は家にいるとき、学校にいるとき、大きな声を出したことはなかった。
 それは、声をあげれば義父母や学校の人たちに暴力を振るわれたことが原因だった。
 それ以来瑠璃が声を荒げることはなかった。
 例えどんなにひどい暴力を振るわれようともただ、黙って耐えるしかなかった。

 そんなことを思い出していると、サラにもマリーナにもそんなことをされると思い、ガタガタと身体を振るわせ始めた。

「「っ!!」」

 サラは瑠璃を怯えさせるつもりで言ったわけではなかったが、結果的には傷つけることになってしまい自分自身に腹立たしさを感じていた。




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