記憶の欠片

□8話 提案と条件
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三人はフェザーの背に乗り風の中を突き進む。

「…で、どこに向かってるんだ?」

ラオマが風の抵抗に目を細めながら言う。

「知り合いの家よ」

ロゼルはゴーグルをかけているのでラオマのように目を細める必要はない。

「ほら、見えてきたよ」

ラオマが何とか目を開けると、大きな街が見える。

高度が下がり、やがて街外れにフワリと着地した。

「さ、行くよ」

三人が街に入り、ロゼルを先頭に進んで行く。

賑やかな市場を過ぎ、閑静な住宅街を通り抜けると、一軒の家が見えた。

「あの家だよ」

「何かこの一軒だけ街から孤立してないか?」

ラオマの言う通り、その家の周り約200mは建物が無く、空き地になっている。

「アイツが『暴れた時に、街の人に被害が出ないように』って、近くに家を建てさせないのさ」

「優しい人なんですね」

「…まあ、否定はしないけど、肯定もしない」

そう言ったロゼルは、なぜか不機嫌な顔をしていた。

その時、家の扉が開き、長髪の男が現れた。

その黒髪は男とは思えないほど綺麗で、異様にサラサラだった。

男の左腰にはナイフ、右腰には銃が提げられているのが見える。

「久しぶりね、ローグ」

ロゼルが声をかけるとローグと呼ばれたその男は…

「誰かと思えば…お前かロゼル!!」

いきなり銃を乱射した。

それを予測していたようにロゼルは銀で壁を作り、銃弾全てを防ぐ。

「今のがさっき肯定しなかった理由よ、ラミ?」

「確かに優しい人物とは思えないな…」

「今度は否定しなかった理由がわからないです…」

「まぁそれは直接話してみればわかると思うわ」

「この状況で話なんかできるかよ!」

「そうね、じゃあ…」

ロゼルが作り出した壁に触れると、あっという間に液体になり、津波のようにローグを飲み込んだ。
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