記憶の欠片

□8話 提案と条件
4ページ/4ページ


「どう?これで話が出来るでしょ?」

「いや、まぁ…確かに出来るけど…」

「ちょっとやりすぎじゃないですか?」

「別に?こんなのいつもの事よ」

得意気なロゼル、呆れ顔のラオマ、哀れむラミ。

そして…

「放せ〜!!」

銀の枷で拘束され、もがくローグ。

そんなローグの目の前にしゃがみ、ロゼルが話を始める。

「さてローグ、アンタに頼みがあるんだよ」

「断る!」

「まだ何も言ってないじゃないかい」

「うるさい!お前の頼みにまともなのがあった事なんて無いだろ!!」

「まあまあ、聞くだけ聞いときなって」

「むグ…!?」

銀が口元を塞ぎ、強制的にローグの発言を封じる。

「実はさ、今度出る大会がチーム戦で、人数が足りないんだよ」

話が進むに連れてローグの顔が青くなっていく。

「ロゼル、鼻塞いでる!」

ラオマが慌てて叫ぶ。

「ん?…あぁ」

一方ロゼルは全く急がずに口元の銀をどける。

「ぶはぁッ!!…ハァ…ハァ…し…死ぬかと思った!!」

「ゴメンゴメン…で、あたし達とチーム組まない?」

「あたし達…って事はそっちの二人もメンバーか?」

ローグが息を整えながら聞き返す。

「こっちのラオマはメンバーだけど、もう一人のラミはただの付き添いよ」

ロゼルが二人をそれぞれ指差して紹介する。

ローグが普通に会話を続けられる事に疑問を感じながら、二人は挨拶をした。

「チームを組むのは構わないが、一つ条件がある」

「条件?」

ローグの言葉を聞き、意外そうにロゼルが繰り返す。
「そのラオマって奴の実力が知りたい。そいつが弱かったら俺は参加しない」

「俺!?」

「そうだ。勝てない試合に参加するほど俺はヒマじゃないんだ」

その意見にローグらしいなと納得するロゼル。

「OK!早速始めるわよ」

「おい、ロゼル!勝手に決めるなよ!!」

「そういう条件だもの、諦めなさい。…それともアンタ、誰か試合出てくれそうな人知ってるの?」

記憶喪失のラオマにはラミとセリミア以外に知り合いがいない。

当然そのどちらもローグの代わりにはならない。

(…言い返せない…)

「代わりがいないなら文句は言えないわよね?」

勝ち誇った顔でロゼルが言った。

「…ハイ、ガンバリマス…」

もうラオマは力無く頷くしかなかった。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ