想いを紙に
□3話 朝の姿、夜の姿
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教室の前。
そこで扉に耳を当て、タイミングを見計らっている男がいる。
その男とは………
俺だ
なんでそんな事をしているかというと、挨拶の時に先生が礼するのを待っているんだ。
先生の視界が床でいっぱいになった瞬間に、俺は教室へ潜入するって寸法だ。
「えー、またここの近くで不審者が目撃されたから、みんな気を付けるよーに!……まったく、何でこの町には不審者が集まるんだかなぁ?はい日直〜!」
位置について…
「起立〜っ!」
用意!
「礼っ!」
ドンッ!!
扉を静かにかつ素早く開けて、扉に最も近い俺の机まで音もなく移動す……
「はいみんなストップ!」
……る前に、先生の号令でクラス全体が礼の状態をキープ。
一人だけ頭が残っていた俺に先生が笑顔で言う。
「おはよう紙本、ちょっとこっち来い」
作戦失敗…無謀だったか。
指示に従い教卓の前まで歩く。
全員が礼をしている所を歩くのはなんとも居心地が悪い。
「紙本、今日はなんで遅刻したんだ?」
具現化されたキャラクターと戦ってました、なんて言えるわけないよな…
そんな事言ったら精神病院行き確定だ。
「えーと……とりあえず寝坊って事にしといてください」
「なんだよ『とりあえず』って!先生に言えない事なのか?うん?」
「いや……まあ……なんと言いますか……」
「とにかく遅刻は良くないな、昼休みグランド5周!…あ、みんなもう頭上げて良いぞ〜」
5周……キツイなぁ…
さよなら、俺の昼休み…
つーか、まだ礼したままだったのかよ。
…よく見ると合掌してるヤツもいるし。
「…ん?紙本、その背中どうしたんだ?」
「はい?」
席に戻ろうとした俺に先生が聞く。
背中がどうかしたのか?
「何ですか?何か付いてます?」
「いや、付いてるんじゃなくて破れてる」
破れてる?
どういう事だ?
制服を脱いで確認。
確かに制服はボロボロになっていた。
でもいつの間に?
……あ、思い出した。
焔牙に弾き飛ばされて地面を転がったりしたっけ…
まずいな…何て言い訳すればいいだろう…?
「紙本…」
「は…はい……?」
「事故に遇ったならなんで正直に言わないんだっ!!」
「…はい??」
先生がものすごく心配そうな顔で言った。
よし、これは使える!
「いや…心配かけたくなかったんで…」
「そんな気を遣わなくても良かったんだぞ!?」
「はぁ…」
「よし、昼休みのマラソンはやらなくていいぞ!ゆっくり休んでくれな!!」
「はい…ありがとうございます」
まったく、暑苦しい先生だが、その熱血体質のお陰で助かった。
おかえり、俺の昼休み!
それと、合掌してたヤツらザマーミヤガレ!