記憶の欠片
□2話 結合能力者
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目を覚ましてから3日ほどで男は歩けるくらいまで回復し、一週間も経つ頃には家事を手伝うようになっていた。
「なぁ、ラミの両親ってどうしたんだ?一週間ずっと一人だけど…」
昼食中に男が何気無く聞くと、ラミは少しうつむいて答えた。
「私がまだ小さかった頃、父はこの家を建てました。畑を作るために広い土地が必要で、街から少し離れた所になってしまいましたが父が楽しそうだったので私は幸せでした」
男はラミの話が質問と関係無いので文句を言おうとするが、ラミの様子が少しおかしい事に気付き口をつぐむ。
「父は畑で野菜を作り、それを配達する商売を始めました。やがておいしいと評判になりはじめ、隣町からも注文が入るようになりました。ある日、父が隣町まで配達しに行った帰り道、評判を聞いてお金を持っていると思われたんでしょうね。父は盗賊に襲われて重傷を負いました。一生懸命治療をしたんですがその甲斐も無く息を引き取りました」
ラミの声は少し震え始めている。
「父が亡くなってから三年の間…母は生活を支える為に1日も休まず働き続けました。私も母を助けようと家事を手伝いましたがとうとう母は…病気になってしまい…一ヶ月もしない内に…死んでしまいました…」
ラミはとうとう泣きはじめてしまい、男も顔を背けてうつむく。
「悪い……」
「いいんです……」
「あっ…喉、渇かないか?俺水持って来るよ」
男はそう言って席を立つ。
(ラミにこんなに辛い過去があったなんて…)
台所で男は額を押さえながら立ちつくしていた。
その時、家の外に何か大きな音が響き渡った。