記憶の欠片
□3話 刻まれた名前
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ラミはしばらくの間泣きやまなかった。
男も無言でその場に立っている事しか出来ずにいた。
「……喪失…さん…」
「何だ?」
「ごめ…ん……なさい…」
「何で謝るんだよ」
「だって…危険な目に…遭わせて…しまって…」
「別にいいさ、君のせいじゃない」
「それに…泣いてばかり…いて…」
「好きなだけ泣け。それからまた笑えばいい」
男はそう言った後、急に恥ずかしくなり変形したままの右腕に目線を落とす。
「ん?何だ?」
それまでよく観察しなかったので気付かなかったが、刀身には何か文字が刻まれていた。
「…どうしました?」
「Raoma…ラオマ?誰かの名前か?」
「名前…もしかしてあなたの名前じゃないですか?」
「そう言われると確かに聞き覚えがあるような…無いような…」
「ほらきっとそうですよ!!私これからはラオマさんって呼びますね!」
「いや、まだ俺の名前だと決まったわけじゃ…」
「ラオマ…うん!いい名前ですっ!」
「だからまだ証拠が…」
そこまで言って男はラミがいつの間にか笑顔になっている事に気付く。
「…まぁいっか、喪失さんよりはずっとマシだ」
こうして男はラオマという名前を名乗るようになったのだった。