記憶の欠片
□8話 提案と条件
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「さて…じゃあ話の続きだけど――」
ロゼルが中断された話を再開しようとした時、不意に厨房の扉が開く音が小さく聞こえた。
「あの……ロゼルさん…ですよね…?」
扉から顔を出したのはラミだった。
その顔は少し…いやかなり赤くなっている。
「…そうだよ」
ロゼルが面倒臭そうな顔で答えると、ラミは歓喜の声をあげた。
「はっ…はじめましてッ!!ラミっていいますッ!!あの…サインもらっていいですかッ!?」
「あ〜はいはい。サインなら後でしてあげるから今はちょっと待ってくれる?」
ラミはサインをもらえると聞いて興奮を抑えきれないようだ。
「……で、本題に入るけど今度、近くの街の闘技場で大きい大会があるんだ。それにあたしも参加したいんだけど、チーム戦でね…」
「要するに人数が足りないから俺に仲間になれと?」
「ピンポーン!」
ロゼルがにこりと笑う。
「報酬は?」
あまり気が乗らなかったラオマは断る理由にならないかと考えて聞いたのだが、ロゼルの耳打ちで目を丸くした。
「そんなに!?」
「ええ。大きい大会って言ったでしょ?」
少し考えた後、ラオマは口を開く。
「わかった……と言いたいが、俺一人で決めるわけにもいかない。ラミはどう思う?」
ラオマは一応『居候』という立場であり、生活費を出してもらっている。
そのため、お金に関わる話を家主であるラミに相談したのだが…
「ロゼルさんの助けになるのでしたら是非!」
どうやら正しい意味では通じなかったらしい。
「OK!決まりね」
ロゼルは嬉しそうに笑うとラオマに右手を差し出す。
「ああ、よろしく」
ラオマも右手を出し、握手を交した。