記憶の欠片
□9話 力の限界
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炎が収まり、視界を遮る物がなくなると、そこには片膝を着いたラオマがいた。
その腕は元の人間の腕に戻っている。
「ほう…耐えきったか」
ラオマは返事をする事が出来なかった。
ダメージにより乱れた呼吸を整えるだけで精一杯だったのだ。
(く…ヒール…!)
(承知している)
一気に傷が塞がり、程なくして立てる状態まで回復した。
「合格…だよな…?」
未だに呼吸が荒いラオマが問うと、ローグは頷いて答える。
「ああ、それは認めよう。だが…」
その時、立ち上がろうとしたラオマが倒れ、両手を地面に着いた。
朦朧とする意識の中、ローグの声が響く。
「…自分の限界もわからない様じゃ、大会に出てもすぐ負けるぞ?」
「アンタは能力に頼りすぎなのよ」
近付いて来たロゼルも口を挟む。
「能力の制御が出来てないから、すぐにバテるの」
「能力の…制御…?」
「そう!」
「体力の消耗、能力の酷使による精神力の浪費や集中力の低下、そういった悪条件が重なる事により能力の維持は難しくなる…という訳だ」
「…よくわからん」
ラオマが難しい顔をした。
「良いだろう、俺が体に叩き込んでやるよ」
そこまで聞いた所でラオマの意識は途切れ、闇に沈んで行った。