小説T

□籠の鳥
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「エージ…キスして………?」

リョーマの唐突な言葉。

普段自分から強いることのないリョーマの台詞に英二は一瞬固まった。

「ダメ…?」

上目遣いに見上げてくるその愛くるしい表情に、倒れそうになる。

如何詮、今のリョーマは普段ではありえない艶っぽさを放っていたのだ。

ここで行かなきゃ男が廃る。

英二はこのリョーマをもう少し堪能することにした。

「どした?初めてじゃん、そんなこと言うの」

リョーマの腰を引き寄せ、軽く顎を掴んで上を向かせた。

近くなった二人の視線が絡み合う。

ふとリョーマの視界が閉ざされた。

唇には英二の温もり。

優しく啄む様なキスの後、舌を挿入され口腔を犯された。

「ふっ…ん…」

長い長いキスの後に漏れる、少し荒くなった息継ぎ。

「は…ぁ…」

唇を離すと二人を伝う銀色の細い糸。

それを見た英二はニヤリと笑った。

それが始まりの合図。

リョーマは徐々に溺れていった…。



「…で、ホントの所は何なの?」

情事の後、英二は煙草に火を付けながら言った。

「何って…何?」

ベッドに突っ伏したままのリョーマが気だるそうに、疑問を疑問で返した。

「だから、キスを強請った理由」

もう忘れてんのか、と付け足して言ってやる。

リョーマは「あぁ」と相槌を打つと、軋む体を支えながらゆっくりと英二のいる方を向いた。

「ソレ…」

と英二が吸っている煙草を指差した。

「…煙草?」

英二はリョーマに指摘され、不思議そうに自分が持っていた煙草を見た。

「ヤミツキになったんだよね、その煙草の味…」

あぁ…

「じゃあ、俺が煙草止めたら他の誰か煙草吸ってるヤツのトコにでも行く…?」

どうしよう…

「ジョーダンじゃない。誰がアンタ意外とこんな事するかっての」

自惚れてもいいのかな…?

「じゃあ、一生俺のモノでいる?」

籠の鳥にしちゃうよ…?

「アンタが…俺のモノになるならいいよ…」

あぁ…もうダメだ…

ヤミツキになっていたのは俺の方かもしれない………


<終>



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