TRIP!
□Chapter.4-3 オリバンダーの店
1ページ/4ページ
オリバンダーの店はすぐに見つかった。
けれど楽しみは最後に取っておこうというウサギの提案で、三人はまず他の用事を済ませる事にした。
鍋屋で錫製の大鍋。
マダムマルキンの洋装店で黒のローブや制服。
フローリシュ・アンド・ブロッツ書店では教科書をすべて揃える事ができた。
街並、お店に並ぶ数々の商品。
何もかも現実の世界とは違う初めて見るものばかりで、三人ははしゃぎっぱなしだ。
買い物を終え、横丁をひと通り散策した後、
三人は休憩にナッツ入りのチョコレートとラズベリーのアイスクリームを食べ、オリバンダーの店へ向かった。
ハジメ「たのも〜〜!!」
バーン!と大きな音をたてて、ハジメが勢いよく扉を開けた。
中へ入ると店内は思っていたよりも、狭く小さかった。
天井近くまで積み重ねられた細長い箱はすべて魔法の杖。
この中たくさんの杖の中に三人それぞれの為の杖が眠っているのだ。
ウサギ「オリバンダーさーん、こんにちはー!・・・あれ?お留守でしょうか」
ハジメ、ウサギに続き、キューリーが店内に足を踏み入れると、足下から微かな揺れを感じた。
――地震?
キューリーがそう思った、次の瞬間。
ドサドサドサドサッ・・・・・!!
積み上げられた箱の壁が、大きな音をたてて一斉に崩れ落ち出してしまった。
原因はもちろん・・・先程のハジメの豪快な扉の開け方のせいである。
ハジメ「お〜っと、これは失敬☆」
キューリー「ハジメさん・・・なんて事を・・・!」
崩れ落ちた箱の山の一部がバラバラと転がり、中から乱れ髪の老人が顔を出した。
ハジメ「あ、居たじゃん」
ウサギ「オリバンダーさん!!」
キューリー「た、大変っ!」
ウサギとキューリーは、慌ててオリバンダー老人の元へ駆け寄った。
手を差しのべると老人はよろよろと立ち上がった。
キューリー「お怪我はありませんか?」
「元気のいいお客様じゃ。しかし、今のはこの老体には少しばかりきついですなぁ」
老人は朗らかに笑うと、杖をひと振りした。
すると箱達は宙を舞って元の場所へ素早く収まり、崩れ落ちた山はあっという間に綺麗に片付いてしまった。
ウサギ「すごーい!これこそ魔法だぁ」
思わず歓声をあげたウサギに、老人は自慢げな笑みを返してみせた。
「さてと、お嬢様方。紀元前三八三年創業 オリバンダーの店へようこそ。杖をお探しなのですな。ではまずどなたから・・・」
ハジメ「はいっ!はい、はい、は〜い!!」
老人が言い終えないうちに、ハジメは老人に勢いよく詰め寄った。
たじろいだ老人がハジメの肩越しにこちらに視線を送ってきたので、ウサギとキューリーは無言で大きく頷いて見せた。
「で、では、あなたから見るとしよう。まったく・・・せっかちなお嬢さんだ。」
「ふーむ、どれどれ・・・。この杖はどうかな。」
老人は、少しの間ハジメを観察した後、ひとつの箱を持ってきた。
中から出てきた杖を見た瞬間、ハジメはその杖を手でなぎ払った。
ハジメ「ちっが〜〜う!」
「な、何をするんじゃ」
ハジメ「ちがう!ちがう!アタシが欲しいのはそんなんじゃなくて、スネイプ先生の杖だから!!」
「ス、スネイプ・・・!?スネイプとは、あの陰気で地味な少年の事か?・・・いや、今は立派に教授になられたが・・・。
何を言っておるんじゃ、人が杖を選ぶのではなく、"杖自身"が使う者を選ぶのだぞ。」
ハジメはチッっと舌打ちを返した。
ハジメ「ええい!黙れ、老人!チンタラしてないで早く杖を寄こしな!」
そう履き捨てるとハジメは老人の杖を勝手に奪うと、叫んだ。
ハジメ「アクシオ!!我輩の杖!!」
すると杖の壁の中から、真っ黒な箱が飛び出し、ハジメの元へまっすぐに向かってきた。
ハジメは蓋を開けると、満足そうにニヤリと笑った。
ハジメ「・・・クフフフ・・・。これ、これ、これよ〜!」
ハジメは取り出した杖を、ウサギとキューリーの前に突き出した。
その杖は、スネイプ教授の物にそっくりな、真っ黒な杖だった。
「まったくあなたは何て無茶苦茶な!その杖は・・・35センチ。ケヤキとドラゴンの心臓の琴線でできておる物じゃ。」
そう説明した老人の声は、ハジメの耳にはまったく届いてなかった。
ハジメは訳のわからない雄叫びを上げて、無理矢理(?)手に入れた杖を振り回している。
ウサギ「・・・オリバンダーさん、彼女には構わなくて大丈夫です・・・。次はわたしのをお願いします・・・」