紡ぎ愛

□序
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中学3年。
受験の願書を提出する頃になって、自宅から徒歩5分の距離にある高校に決めたら、担任に泣きつかれた。
もっと上のランクの高校にしてくれ、と。
だが、学校側の事情なんて俺には関係ない。
朝から満員電車に乗りたくないし、朝はゆっくりしたい。
独り暮らしなんて面倒だから家を出たくないし、正直勉強が好きなわけでもない。

そう言えば、担任は泣きながら俺にパンフレットを差し出した。

「山田なら、ここの奨学生になれる」
「面倒くさいんで「ここの奨学生になると、学費免除、寮費免除、学食費半額、寮部屋は一人部屋だ」……」


それは少し惹かれる。

「設備も良いし、部屋にはパソコン完備だそうだ。自炊したければキッチンもスーパーもある。備え付けの家電も最新のものだし、希望すれば場合によっては交換も可能だ」
「……コンクリートジャングルは嫌いです」
「……おまえそんな比喩知ってるのか‥。安心しろ。ここは自然溢れる環境で、森林浴気分で散歩もできる」
「願書、そこにお願いします」


決め手は森林浴だった。





思えばこの時、俺はあいつらに会うために選んだのかもしれない。


私立繚陽学院高等部を。



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