(双子設定) 「一人で食べるご飯って、どうして美味しくないんだろうナ」 ヘラリと笑いながらリンは俺の目の前で小さく呟いた。そして一呼吸おいて、また言葉を続ける双子の片割れ。 「結構時間をかけて沢山の具材を入れて煮込んだスープ、この前一緒に食べただロ?それが食べたくなってグリードが出掛けた時、こっそり作ってみたんダ。で、食べてみたんだが、この前お前と一緒に食べた時みたいに美味しくなかったんだヨ」 そう話始めた。 「……調味料入れすぎたか?」 半分ふざけながら答える俺にリンは、 「グリードじゃないんだから間違えるわけないだロ」 と、笑いながら言い返された。軽く胸に何かがグサリと突き刺さる。 いやいや。流石に俺だって調味料くらいは間違わねーと思うぜ?塩と砂糖は見分けつかねーけど味見すりゃあ分かるし。ソースとマスタードなんて一目瞭然だろ。勿論、俺は料理したことなんて一度もねーからよく分かんねーけど。いつもはリンが作ってくれっからな。 ってなわけで話を戻す。 「へいへい。でもそれ、分かる気がするぜ。食べ物じゃねーけど、お前と二人で歩いた街並みは見慣れている筈なのに、なんつーかよ。キラキラして見えんだよな」 「お前も、そうなのカ。俺も同じダ」 「ホント不思議だよなあ。別に何かが足されてるわけでもなければ、引かれてるわけでもねーのによ」 「グリードはどうしてだと思ウ?」 「あー……」 そこで俺は右手を顎に添えて思案する。何故、二人で共にいる時はこんなにも世界が違って見えるのか。何故、一人で過ごす時間はあんなにも寂しく虚しいものなのか。見るもの、聞くもの、食べるもの、嗅ぐもの、触るもの。五感全てが別物になるのはどうしてか。そうして俺は幾分か考えた末、ある一つの答えに辿り着いた。 そうか、なるほどな。 「俺が思うに、俺等は二つで一つなんじゃねーの?……まあ、元は一卵性双生児で一つだったのは間違いねぇがな」 「つまり、どういうことダ?」 「だからよ、一人だと未完全な固体だが、俺等二人で完全な固体っつーことだよ。つまり互いが互いを補い合ってる。お前は家事で家を支え、俺は仕事で養う金を稼ぐ。……だろ?」 「グリード。お前、たまには良いこと言うんだナ。兄ちゃん感動しだゾ!」 「なんかウゼェ!リンはいつも一言余計だっての!このバカ兄貴!」 「なんだト!このアホ弟!」 そんなこんなで約一時間。俺等兄弟は口論の末、拳を交える羽目になったのだった。リンに殴られた頬やら腹やらが今もヒリヒリと痛ぇ。
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