ホワイトスターに黙祷を、

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牛尾に言われるまま、後をついて行くと、

体育館裏で その足は止まった。



「フフ・・。見たまえ、遊戯くん」


「・・城之内くん!本田くん!」



牛尾が誇らしげに見せつけたのは、

酷く傷だらけの 遊戯の友達だった。


血が滲む程 徹底的に殴られていて、立つ事も出来ずに 壁に無造作に寄り掛かっていた。



「言った筈だよ。この牛尾、君のボディーガードを引き受けると。

だから“制裁”を加えてやったのさ!」



すぐさま2人に駆け寄ると、
その傷は より痛々しく見えた。



「こんなの酷過ぎるよ!
大丈夫かい・・!?」


「遊戯…、てめぇ・・・気が済んだかよ…」


「違うよ!僕がこんな酷い事 頼んだとでも…?」


「退け、遊戯!まだ制裁は終わった訳では無い!」



牛尾は乱暴に遊戯を突き飛ばすと、

動けずにいる城之内の腹に 容赦無く蹴りを入れる。



これ以上 痛め付けられれば、
2人は死んでしまうかもしれない。


その思いから、遊戯は牛尾の前に立ちはだかり、

2人を その小さな背に庇った。



「遊戯、こいつ等を庇うって言うのか?

今までの恨みを晴らすチャンスなんだぞ。
殴れよ!蹴れよ!」


「友達に、そんな事出来る訳無いだろ!!!」



どんなに今、怖い思いをしても。

自分じゃ到底敵わない様な相手の前でも。


ずっと友人がほしかった遊戯の、
友情を想う気持ちが揺らぐ事は無かった。


それは千年パズルのピースを組むと共に組み上がっていった、

しっかりと確かな形を持った、強さとして

遊戯の中に息衝いているのだった。




「まぁ、いい…。
ところで遊戯くん。君には払うモン払って貰うぜ。

ボディーガード料…、締めて20万だ!」


「何だってぇ!20万!?」



まるで悪徳業者の詐欺の様な手口ではないか。


頼んでも望んでもいない事を勝手にやって、

その上法外な金額を要求してくる、性質の悪い人。



遊戯が思ってもみなかった言葉に困惑して、黙っていると、

さらに追い打ちを掛けてくる。



「・・なら、その2人を もっと痛め付けないと満足して貰えない訳か…」



どんな事があっても、お金を払わせるつもりの様で

彼らを庇う遊戯に、選択肢は無いのだと言っている。



「もうこれ以上2人に手を出さないで!!

やるんならボクをやりなよ!!」



その言葉は、痛みにあやふやになっていた城之内の意識を呼び戻した。

とてもじゃないが、信じられない話だったからだ。



散々からかっていた自分達を、
“友達”だと 言っていた。

これ以上手を出すな、と
その頼りない背中で庇った事。


いつもみたいに弱気でいればいいものを。

抵抗を見せ、我が身を盾にするというのか。


それらは今まで 城之内が生きてきた世界では、

与えられる事の無かった類の
“友情”や“愛情”だと言える。




体格も違う。大した力も持たない遊戯は 好き勝手に殴られていた。


それでも遊戯の中で その想いは途絶える事は 無かったし、

8年もの間、パズルと共に固く組み上がってきた信念は強くなっていく。



(ボクは パズルに願ったんだ…。
“親友がほしい”って…。

どんな時でも 裏切らない。
そして、裏切られない 親友!)




―――・・・遊戯!!



(…・・、遊雨…?)





『てンめっ…!!
その手を放しなさいぃぃ!!!』



遊戯にとって聞きなれた声が上空から舞い降りたかと思えば、

本人直々に舞い降りてきていた。


空中で箒を大きく振り被った遊雨は

渾身の力を持ってして、暴力男に振り下ろした。

牛尾は慌てて飛び退いて、
攻撃は地面に吸収された。



『今すぐ退きなさい…。じきに先生が来ますよ?』



呼びましたから、と 鋭い瞳で微笑してみせる。

それは殺意に最もよく似た、微笑みだった。



「ちっ…。遊戯!明日までだぞ!
約束を破ったら、この程度じゃ済まないぜ?」



牛尾は そう言い残して立ち去ってくれた。





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