【辻占】
辻占。それは吉凶の兆しを拾う言葉を導く。
鏡を懐に入れて、最初に聴こえて来た言葉を兆しにするのだと言う。
時に私の耳元か はたまた心の奥か、で誰かが囁いてくれる様な気がする。
“気を、つけてね”
“危ないよ”
“それは、駄目だ”
未来を鮮明に教えてくれる事は無い。
けれど、僅かぼんやりと 不確かに先の真実を一欠片、伝えられる。
やさしさに満ちた、声無き声が兆しとなったのは いつの頃だっただろうか。
あの日。
その声が、言ったんだ。
“彼が 帰って来たね。また傍に、居てあげて…”
どうして その言葉に懐かしさを感じたのか、私は 知らない。
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