Stargazer

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【変化を伴う日常の中で】


彼女は本当に何も知らなかった。

まず、自分が誰なのか から
この世界の仕組みまで。



ここが“サテライト”と呼ばれる、下級被支配層にあたる場所だという事。

そして“シティ”はその逆。


そして、瞬きをした瞬間には
もう違う世界に居た様な気分、と言っていた。

それ程に唐突な出来事だったのだ。


全くの知らない土地で、頼りの記憶まで失くして。

迷子でどうする事も出来なくなった子供の様だった。


解らない事だらけになってしまった彼女は不安で精神が安定していないのか、

話せるけれど、どこか拙くて幼い様に思う。
傍から離れる事を嫌がったりする。

少し大人びた子供の様であって、実年齢に比例した本当の自分を取り戻せないでいる。

しかしこれも、ここに慣れれば無くなる事と思う。




『ゆーせー、デュエルしよう?』


「あぁ、構わない。やろう」



昼下がりの穏やかな日。
暇を持て余した二人がデュエルをする事は よくあった。

適当な大きさの台を持ってきて、デッキを定位置に置く。


シェリーはデュエルディスクを持ってはいないので、

スタンディングデュエルは行わない。と言うよりも、知らない様だった。


今はデュエルディスクが主流で、テーブルデュエルをする機会は減っているが、

彼女にとっては此方の方が当たり前の行為らしい。



『デュエル』
「デュエル」



互いにデッキから手札として五枚、ドローしてスタート。
先攻はシェリーに譲られた。



『私のターン。ドロー!
私は[翻弄するエルフの剣士]を守備表示で出して、ターンエンド』


[翻弄するエルフの剣士]
DEF:1200
攻撃力1900以上のモンスターとの戦闘では破壊されない。



「俺のターン。ドロー。
[スピード・ウォリアー]を召喚。

このカードは召喚したターンのみ、攻撃力が2倍となる」


ATK:900→1800

エルフの剣士の効果対象にならないスピード・ウォリアーが破壊する。



「俺はカードを1枚セットし、ターンエンド」


『私のターン!ドロー。
[熟練の黒魔導師 DEF:1900]を守備表示で召喚。

更に手札から魔法カード[二重召喚]を発動する!』



[二重召喚]はターン中にもう一度、通常召喚を行える魔法カードだ。

シェリーは[ヂェミナイ・エルフ ATK:1900]を召喚。


更に、[熟練の黒魔導師]は魔法カードを発動する度にカウンターを1つ乗せる。



『バトル![ヂェミナイ・エルフ]で[スピード・ウォリアー]を攻撃!』


「罠発動![くず鉄のかかし]。
相手の攻撃を1度だけ無効にし、発動後は墓地に送らず、セットし直す」



シェリーの攻撃は ジャンクで出来た案山子に邪魔をされ、無効化されてしまった。

当然[スピード・ウォリアー]は難を逃れてフィールドに残る。



『…じゃあ、カードを1枚伏せて ターンを終了!』


「俺のターン。[ジャンク・シンクロン]を召喚!

レベル2[スピード・ウォリアー]に レベル3[ジャンク・シンクロン]をチューニング!」




「シンクロ召喚!出でよ、[ジャンク・ウォリアー]」



遊星のデッキの中でもエースカードとして活躍する、[ジャンク・ウォリアー]だ。

デュエルの経験は浅いらしいシェリーにとって この召喚は阻止したかったのだが。



「いくぞ、[ジャンク・ウォリアー]で[熟練の黒魔導師]を攻撃する」



[黒魔導師]の効果を解っている遊星は、此方を優先してきたのだ。

シェリーは慌ててテーブル上の 魔法・罠ゾーンのカードを捲る。



『リバースカード、オープン! [攻撃の無力化]!
引いてなかったら危なかった…』



攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる罠カードだ。



『…今ので私のカードを墓地にさよなら出来なかったのは 痛かったよね、遊星』


「あぁ、そうだな。[黒魔導師]の効果を待たなくても、手札にあるのなら召喚出来るからな」



シェリーは 正解、と楽しそうに笑顔を見せる。

これから召喚するカードがシェリーにとって、大好きなカードだからだ。



『いくよ、遊星!
[熟練の黒魔導師]と[ヂェミナイ・エルフ]を生け贄に捧げ…、

私の愛する[ブラック・マジシャン]を召喚!』



遊星は楽しそうにデュエルをするシェリーを見るのが好きだった。

彼もまた、小さく口元に微笑みを浮かべて。
普段はクールで無表情に見える彼の表情は、穏やかになる。






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