【ひとつ欠けたのちの生活】
ジャックがサテライトを出て、数日後。
遊星が一人 部屋に籠ったまま出てこなくなった。
別に鍵が掛けられている訳ではないけれど、
声をかける事を躊躇ったまま 一日が過ぎた。
すると以外にもあっさり、引き籠り生活は一日で終了して 何事も無かった様に
シェリーが朝起きると、遊星はキッチンに居た。
どうやら引き籠っていた原因は 新しく製作するD・ホイールの機能と設計を考えていたとか。
『一日も顔出さなかったのに、食事は?』
「ちゃんと摂っていた」
部屋には 忙しい人の為の気休め程度な栄養補助食品が常備されているのだと知った。
果たしてあれは“一食”とカウントしてもよかっただろうか。
D・ホイールの図面が完成すると、遊星は熱心に製作に取り掛かる。
遊星のいいところでもあるが、同時に熱心過ぎて
食事や睡眠が生活から省かれていってしまうので 世話を焼きたくなってしまう。
『明日早朝から工場で作業してくるから、朝寝てたら起こしてくれる?』
「あぁ、解った。いつ戻る?」
『お昼過ぎには帰ってくるよ。
…ごはん食べるの忘れちゃ駄目だからね』
「‥努力する」
早朝に仕事が入るのは、朝の弱いシェリーのは辛かったが
その分午後は遊星とずっと居られると思うと苦にならない。
きっと遊星はD・ホイールの事ばかり考えているだろうけれど、
それでも一緒に居られるなら少しでも手伝っていたかった。
なにより遊星の無自覚な不摂生との戦いがある。
何とかちゃんとした食事を摂らせねば、と。
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