【ステップ・バイ・ステップ】
サテライトの朝はシティより少し早い。
それはサテライトにシティから排出されるゴミを処理するという存在意義がある限り、仕方の無い事だ。
深夜、工場の可動が止まった後もゴミはパイプラインを通って送られ続ける。
朝早くから作業を始めないと次々に流れ着く不要物の処理は追い付かなくなってしまう。
朝日が弱々しく地上を照らす早朝に、陽の入らない地下鉄跡を利用した部屋の中で遊星は目を覚ました。
彼は窓から射し込む朝日で起こされるのは、どちらかと言うと好きではない方だった。
その為ここは丁度よく、更には徹夜でもしない限り自然と夜明けと共に目を覚ます彼にとっては、陽射しが無くても何も問題無かった。
ゆっくり身体を起して薄っぺらいカーテン一枚で分割された向こう側、
同じ部屋の別のベッドでまだ眠っている彼女を起さない様に物音に気を付ける。
といっても遊星自身物静かなのであまり心配する必要も無いかもしれない。
どちらかと言えば彼女は朝日の射し込む部屋でないと起きられない質であるらしい。
別に彼女を起こす事を苦に思った事も無いし、眠いのなら寝させておいてやりたいとも思うので、これも遊星には何の問題にもなっていない。
つまり二人は上手くやっていけているのだ。
物静かであまり多くを言葉にはしない遊星。
素直で愛嬌のあるシェリー。
遊星は彼女の抱えるものを黙って受け入れ、シェリーは彼の内側に寄り添う事が出来た。
家族とは違う、友人では終わらない関係だった。
こうして朝は始まり、太陽が沈むまで続く。
遊星は夜明けを迎えたばかりでであろう部屋から静かに外へ出て行った。
崩壊した天井が地上のコンクリート製の道路の亀裂であって、ここが地下なのだと物語る。
惜しみない光はここから溢れて彼を今日初めて照らし出した。
真っ直ぐな瞳はいつだって遠い空を見上げていた。
追い求める全ては、そこにあるのだろうか。
どこまで続いているのか判らない、宇宙と空の境界線の曖昧な場所に未来の影を重ねているのだろうか。
未来に不安の無い者など居はしない。
不動 遊星は尚更、運命の先に何が待っているのか解らない可能性と不安を伏せ持つ定めだった。
自分がこれから成そうとしている事は、果たして正しいのだろうか…。
そうする事でどうなるのか、どこへ向かうべきなのか。
タイムリミットが迫るにつれて、遊星はどこか思いを廻らせる事が多くなっていった。
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