I’m he.

□憎いあなたへ贈り物
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ぎゃああぁああ!という悲鳴が俺の寝室まで届いて、どうせまた虫かなんか出たんやろ。と椅子から腰を浮かせた。おい、アントーニョぉお!泣き声は玄関からだった。ドアを激しく叩く音が家中に轟く。これはどうやら虫の千倍近く恐ろしそうだ。ドアノブが左右にガチャンガチャン回されて、その周りの木がミシミシ唸っていて、やばい。と背筋に冷や汗が垂れた。

「なんか、女が、女が、お前をだせって…ちぎぎ」
「お、俺?」
「怖えぇえ!!」

一生懸命にドアを押さえるロヴィーノを足元に、覗き穴からおそるおそる外の様子を伺った。あれ…?真っ暗やん。少し覗き穴との距離を取って目を細めて見えたのは血走った、目。

「うわああぁぁあ!!?」

腰を抜かして床に尻餅をつくと、ゴリッという音がしてロヴィーノの脇のドアから鋭利な銀色が生えた。さすがにこれには耐えられず、床を四つん這いに俺の後ろに隠れた。ナイフがドアを貫通だなんて、相当の馬鹿力がいる。もしくは、何度も同じとこを根気よく突くとか。そう考えて、思考が凍結する。俺の後ろでぶるぶる震えてるこいつも、俺と同じことを考えていたようだ。…もしかして、あのドアを叩く音は全てナイフによるものではなかったのだろうか。

その考えすらもきしみながらゆっくり開いたドアによって奪い取られる。

「カリエドカリエドカリエドカリエド…いた。」

銀髪の少女が布に包まれた何かを手に持って宙に視線をさまよわせた後、俺に焦点を合わせて歪んだ笑顔を作った。

「何の用?」
「カリエドは敵、アーサーさんの邪魔者、排除排除排除…死ね。」

俺の問いにも答えず、布から取り出されたもう一つの銀色を振りかざして俺に向かって思いっきりその高度を下げた。普通の子やったら絶対可愛いのに、とか思う余裕があるのはその手が眼前でぴた、と静止したからだ。からんと何回か音を立ててナイフが床に寝ころんだ。目を見開いた彼女が俺の上に倒れ込む。顔を上げればドアから少し入ったところに息を切らせて拳を握るカークランドの姿があった。

「なんやねん。この子お前の指示で動いとったんちゃうん、」
「だったらお前なんか助けるかよ。」

それ以上は何も口にせず、静かに俺にうなだれかかる彼女を担いだ。背を向けて、邪魔したな。と言ってもう使い物にならないドアを出ていった。

「な、何だったんだよ。今の…」
「すまん、ロヴィーノ。怖い思いさせたな。」
「お前は謝る必要ねーよ!お前は…」

と、ドアに目をやったから俺もつられて視線を移す。外に出てみて目を丸くした。


憎いあなたへ贈り物

そう彫られたナイフが、ドアに何十本も針山のように刺さっていた。



▽ あとがき 0813
うーん。何故アーサーがきたのか。よかったら(clap!

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