隣にいる者3

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「ヒトミちゃん、おはよう」
「あ、おはよう」
「なんか眠そうだね」
「うん」

プロ試験が終わってから初めての学校。
昨日はずっと夜遅くまで
佐為と打っていたので、とても眠い

学校に来て、机に突っ伏して目を閉じていたら
風香に挨拶をされたので顔を上げて話す。

「ヒトミちゃん、プロ試験受かったんだね!
写真が載ってるの見たよ」
「よく見たね、今日言うつもりだったんだけど」
「ずっと気になってたから。」
「そっか」
「プロ試験合格おめでとう!」
「ありがとう」

改めて言われるととても嬉しくなる。
本当に合格出来てよかったと思う。

「それで香菜のことなんだけど」
「うん、もうプロ試験終わったしできるだけ力になるよ」
「ありがとう!」

この後色々予定を聞き、香菜との練習の時間が決まった
意外と遅くまで大丈夫らしいので助かった

「香菜のことよろしくね」
「うん」
「えっと、それでさ、私も囲碁教えて欲しいなーなんて」
「え?興味あるの?」
「うん。学校で暇な時に私にも教えて欲しい。
これ持ってるから!」
「マグネット碁盤。買ったんだ」
「もちろん!早速教えて!」
「まだ時間はあるね。いいよ」

ヒトミの机にマグネット碁盤を置く。
友達が囲碁に興味を持ってくれることが嬉しくて
笑顔が隠せない。

「どこまで知ってるの?」
「妹がやってるのを
たまに見るくらいだから、全然分からない」
「うーん、じゃあ石とりゲームやろうか」
「石とりゲーム?」
「そう。見てて」

石を並べ、どうやったら
石を取られるのかを説明した後、
次々と問題を出していく。
こういうのは得意なのか、
なんなく問題をクリアしていく

しかし、時間が過ぎるのはあっという間。
短い朝休みは終わってしまい、
昼休みにまたやろうということになった。







































授業が始まり先生の話をボーと聞いていると
佐為が話しかけてきた

『ヒトミは、人に教えることも好きですよね』
『そうだね。教えるのも楽しい』
『また、白川先生の囲碁教室に行ってはどうですか?』
『あっそれいいかもね。
新初段シリーズまでは香奈ちゃんの指導を
する以外にやることないし』
『決まりですね』
『佐為はどこか行きたいところないの?』
『私が行きたいところですか?
うーん、そうですね。
あ!ヒカルの家に行きたいです!』
『いいねそれ。いつも私の家に来るんだから、
たまにはヒカルの家に行こうか』
『はい!』

その後もどこに行きたいかと挙げていったら、
意外とたくさんあり、
まずはどこから行こうかと考えたり、
佐為と話していたら
あっという間に昼休みとなってしまった

「全く話聞いてなかった」
「ヒトミちゃんは大丈夫だよ」
「なんでそんなこと言えるのよ」
「いつも学年上位入ってるから」
「そりゃ、奨学金もらうためには
学年上位に入らないといけないから、
頑張ってるけどさ、
出来るだけ授業中だけで頭に入れて、
家では碁打ちたいよ」
「それ、家でも頑張って勉強して、
塾にまで行ってる人に怒られるよ」
「あはは」

一応ヒトミは中学を卒業しているので、
また同じことを教わっているわけで、
これで出来なかったら逆に困るのだ

「よし、お弁当も食べ終わったし、
さっきの続きやろうよ!」

お弁当を即策と片付け、
マグネット碁盤を出す風香に、
ハマったみたいだなと思いながらも
今度は違うことを教えることにした

「打とうか」
「えっ?もう打つの?ルール分からないよ」
「ちゃんとしたルールでやるわけじゃないよ。
取り敢えず、交互に打って、
石の数が5個多くなった方が
勝ちっていうルールで打つの」
「あ、それなら出来そう」

このマグネット碁盤は9路盤なので、
すぐに終わってたくさん打てると思い、
ヒトミはこのルールを提案した。

そして、打つ前に
禁じ手やコウというものだけ説明をした。

「ふーん、そんなのあるんだ。わかった」
「じゃあ、そっちから打っていいよ。
先に打つ人は黒ね」
「わかった!」

ヒトミたちが打っているのが気になったのか、
クラスの人が次々と
ヒトミの机の周りに集まってくる。
何回かヒトミの勝ちが続いたとき

「オレにも打たせろよ」

クラスの男子が名乗りを上げた

「奥村」
「イヤよ!私がヒトミちゃんと
打ってるんだから」
「いいじゃんか、
おまえの打ってるのを見ると焦るんだよ」
「しょうがないじゃん。
今日初めてやったんだから」
「見るのも勉強。いいだろ?南条」
「いいよ」
「むー、奥村くんなんて、
すぐに負けるんだから!」
「9路盤だぜ?5個も差がつかねえよ」

奥村は囲碁部の部員で、
一年の頃アキラに勝負を挑んで
天元を一手目に打った人物だ。
その後もアキラの
虐めに加わったりもしていた

「じゃあ、どうぞ」
「よし!」

奥村から打って始めるが、
あっけなっくヒトミの勝利で終わってしまった

「だっせーな、奥村」
「うるせー!んなこと言うならおまえがやれよ!」
「オレ知らねーもん!」
「ふふっ」

(どんな相手だろうと、
こうやって碁をやっている時が一番楽しい)

改めてそう思った一日だった






2015/03/31


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