隣にいる者3

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「ヒトミちゃん、バイバイ」
「うん、バイバイ。みんなもバイバイ」
「じゃあなー」
「南条ー、明日はオレと打てよー」
「はいはい」

最近クラスに囲碁ブームがきている。

図らずもヒトミの影響なのだが、
こんなにたくさんの人が囲碁に興味を持ち、
自分を倒そうと向ってくることに
とても嬉しく思っている。

そんなヒトミは
クラスメートに手を振って教室から出て、
ヒカルの家へと向かった。

しかし、インターホンを鳴らすと
ヒカルの母親が出て、
まだ学校から帰ってきていないと言う。
なので今度は葉瀬中へと向かった

『囲碁部にでも行っているのでしょうか?』
『ありえない話じゃないよね。行ってみようか』
『はい』

外から回り、理科室の中を覗くと
佐為の予想通りそこには
5面打ちをしているヒカルの姿があった

『楽しそうなことをやっているわね』
『そうですね』
『終わるまで待っていようか』
『その方が良いですね』

暫くその場で待ち、
対局が終わったのを見計らって、
窓を叩いた。その瞬間集まる視線。
一番早く近づいてきたあかりが
窓を開けてくれた

「ヒトミちゃん!」
「久しぶり」
「おまえまた来たのかよ」
「そんな言い方しないでよ。
打ってあげるからさ」
「ふん」
「南条プロだ!」
「え?」

ヒトミの方を見てキラキラした目をしている男子。
その子とヒトミはまだ初対面だった

「キミ、名前は?」
「あ!ボク小池です!」
「そっちの大きい子は?」
「あ、夏目です」
「私は南条ヒトミ。
葉瀬中囲碁部には仲良くしてもらってるんだ」
「そうだったんですか!」

いきなり来たにも関わらず
素直に受け入れてくれた二人には
感謝しなくてはと思った

「結局おまえ、何で来たんだよ」
「ヒカルの家行ったらさ、
まだ帰ってきてないって言われたから、
ここまで来たの」
「何でオレん家に行ったんだよ」
「何で?散々私の家に勝手に来るくせに、
自分の家には上げないつもり?」
「ヒトミは一人暮らしだから
勝手に行ったって問題ねーだろ。
オレの家は母さんもいるし」
「関係ないね」
「関係あるだろ!」
「よく考えてよ。
私がヒカルの家に行きたいなんて考えると思う?」
「……そういうことかよ」

ちゃんと名前を出さずとも納得してくれたので、
やはりヒカルは佐為のことをよくわかっている

「じゃあ、今日来い。
囲碁部終わったらそのまま行く」
「了解」

『よかったね佐為』
『それはよかったのですが、
皆さんが話しについてきていません』

「ん?」

佐為に言われ、周りを見回し、
やっと自分の置かれている状況に気付いたので
ヒトミは慌てて今にも泣きだしそうなあかりに走り寄った

「あかりちゃん。違うからね!」
「ううん、いいの。
なんとなくそうなる気がしてたから」
「違うって!ヒカルがよく家に来ているのは、
碁を打つ相手が自分の家にはいないからで」

ヒトミが一生懸命弁解している一方で、
ヒカルは三谷によって
教室の端につれて行かれ、小声で話しかけられる

「おまえ南条と付き合ってるのか?」
「はあ?んなわけないじゃん」
「だったら紛らわしい会話をするんじゃねぇよ!」
「ヒトミはそんなんじゃねーよ。親友なだけだ」
「男女の友情なんてあると思うか?」
「あるよ。あかりだってそうだろ?」
「おまえは話しになんねぇよ」
「どういうことだよ。おい、三谷!」

ヒトミたちの方へ三谷が戻ってしまったので、
ヒカルは取り残されたが
直ぐに三谷を追いかけて戻ってきた

「あかりちゃん、納得してくれた?」
「うん。ごめんね」
「でもやっぱ私が言っても
あんま信憑性がないから、ヒカルも言って」
「何を?」
「私とヒカルが付き合ってないこと」
「あかりまでそう思ったのか?
ただ家に行ってるだけじゃねか」
「だけじゃないわよ!」
「あかりだって、
オレの家に来るけど付き合ってねえだろ?」
「それは、そうだけど」
「それにヒトミの家に行ってるのはオレだけじゃねえし、
院生仲間だって行ってるよ」
「……わかった」

一安心したヒトミは佐為の方を向いた。
佐為も安心したようで、
同じ表情をしていたので少し笑ってしまった

「じゃあ、気を取り直して、私と打ちたい人!」
「「「はーい!」」」
「全員……よし、まとめてかかってこい!」




































部活動終了時刻まで、たくさん打ち、
みんなと分かれてヒカルの家に来たヒトミ。
ヒカルが家にあかり以外の女の子を
呼んだのが初めてだったようで、
お母さんが凄く驚いてんでいたが、
それを気にせず、挨拶をしてヒカルの部屋に入った

『わー懐かしい。ヒカルの部屋です』
「佐為、すっごく楽しそう」
『ヒカル打ちましょう!』
「ヒカル打ちましょうだって」
「おっそうこなくちゃ!」

こうしてヒカルの部屋で
佐為とヒカルが打つのは約三年ぶり。
二人とも考え深いものが合ったのか、
いつもの碁とは全く違い、
二人の間に挟まれていたヒトミは
この対局を見れたことに感謝をした






2015/04/07


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