fluctuat nec mergitur

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 結局料理を運んできたのはプロシュートとペッシで、ソリオーラは能力を解除すると、びえーんと喚きながら風呂場に走って行った。
「ちっ、やっぱりガキなんざぁ入れるもんじゃねえ」
苛つきながらニョッキをフォークで突き刺し、口に運ぶ。
「ただまぁ台所は普通、居れた場所じゃあないからな、Chanelは残念だったけど許してやれよ」
「いーやそれで赦しちゃあーゆーのは何でもやる。だから今躾とかなきゃなんねぇんだ!」
びしっと言い放つ彼にメローネが笑った。
「プロシュートが教育係とかかわいそ」
「それな。容赦なく殴られるし、彼奴耐えられッかな?」
「ひょろいし」
「泣き虫っぽそう」
「なによりペッシに次ぐマンモーニ臭がする」
「それな」
新人への第一印象を並べて笑い始める。
 暫くすると軋む音を立てて、扉が開いた。
 笑いが止み、皆が扉の方を向くと、其処に立っていたソリオーラはギョッとした。
 口を結んで机の方を見ると何か言いたげにウネウネしている。
「ああ座る場所か」
「そ、座る場所」
リゾットが察すると笑顔を見せて、ゲッツのポーズをした。
 リゾットはポンポンと自分の隣の席を示し、其処に歩いていくと背筋を伸ばして座った。緊張しているようで、表情が堅くなり、怒っている様な顔だ。眉を顰めて口がへの字にしている。
 しかしメンバーは、それの変わり様に目を丸くする者も在れば、笑みを浮かべる者も居た。
 肩にかけている長い一本の三つ編みを解くと、所々跳ねた黒の長髪が現れる。ただ、右の髪は何故か短くておかっぱみたいで、強いて言うなら
「うっわ俺に似てる!」
メローネが机に身を乗り出して顔を近づけた。
「お前に似てるとか死んでも嫌だわ」
「酷いなギアッチョ!ほら見ろ!俺と似てコイツも美形じゃない?」
危うく飲み物が零れそうになっているが、構わずメローネは皆に見せつけ、ふふふと笑う。
「確かに似てるかもな…」
「つーかあからさあまに嫌がってるソリオーラが笑える」
「えっ!?嫌がってる?ソリオーラ嫌がってる!?」
「ぎゃっ」
今度はまたもや、顔をぎゅっと鷲掴みにされ、口がタコになる。
「いや別に嫌がっちゃいないけっどっ」
何て強引でハイテンションな奴等なんだろう。ソリオーラは、漫画で見た彼らと此処で見ている彼らを比べて、何か違う、何か想像と違う!!と、心中で叫んだ。
 そして、心が困り果てたとき、彼奴が、飛び出してきた。
 顔に影がかかり、空気が冷える。
 凍てつく息が開かれた口から吐き出され、まがまがしい雰囲気を漂わせるそれ、の背後。
「ヴェンディ!」
「何をやっておるのじゃ阿呆。少しは抵抗せんか」
威厳のある喋り方には似つかぬ、主人への非難の声。
 すると、ソリオーラの頬を掴んでいたメローネも驚いて席に戻り、今度は全員、ただし此処にはいないソルベとジェラートを除く皆の目がスタンド「クワットロ・ヴェンディ」へ向けられた。
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