fluctuat nec mergitur

□序章
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 怒鳴り声で僕は目を覚ました。
「いい加減起きろ!」
「っは!あ、う…ん、うぅん」
何か冷たいものを投げられて堪らず起きる。
すると自分の身体が椅子に縛られて動かないことに気づく。
「うぇえっ」
驚いて暴れると座っていた椅子ごと床に倒れた。衝撃音がして頬と顎を思い切りぶつけ、あまりの痛さに喚く。
(さっきといいなんだよ)
苛つき、僕は何なんだと周りを見た。
そして目を見開く。
「…生きてる」
僕は呟いた。
 護衛やボスに殺された彼らが集まっていた。戦死して逝った呆気なく崩壊した日常が其処には普通に存在した。
 何かこう、身体の中で切れた。
 涙腺がプツンと。
 僕は変な目で見られるのも構わず、咽び泣いた。
この中で一人でも結末を知らない。
 輪切りにされるなんて、裏切られるなんて、全滅するだなんで誰一人知らないのだ。
「酷いなぁ…酷いよなぁ」
こんなに日常的に死んでしまうなんて。
自分が危機的状況におかれているのも忘れてしまっていた。
 ただ哀れで憐れで、悲劇的だ。
「んで泣いてんだよ?俺たちが苛めてるみてぇじゃねーかよぉ」
「子共なだけに尚更ね」
「で、どうすんだよ?仲間にすんのか、殺すのか」
物騒な会話をする『暗殺チーム』のメンバーら。
 お前達が死ぬのに。
 なんて、分かってない。
赤く腫らした目でぼうっと見ているとリゾットが僕の位置まで屈み込み、色の反転した眼で僕に語りかけた。
「お前が殺したのは俺達の標的だった。見たところかなり強力なスタンド使いのようだが…此処まで来たからには2つの選択肢を出すから、どちらか選べ」
無様な格好で話しを聞く。
僕の中で答えは既に決まっていた。
「俺ら暗殺チームの仲間になるか、殺されるかだ」
「…僕は仲間になる」
答えは即決だった。何の迷いも恐れもその目にはなく、強い意志を宿し。
手は使えないので肩で涙を吹き、小首を傾げて言った。
「信頼を得られるように頑張るから」
口には出せないが、僕は絶対に彼らを死なせないと心中で誓う。きっとそのために来たのだから。
こうして僕は暗殺チームに『ソリオーラ』として入ったのだった。
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