黄泉の国

□ミエルモノ。
1ページ/1ページ






貴方は『絶望』を知っていますか?

また『絶望』した事がありますか?


『死にたい』
そう思った事はありますか?



徐々にぼんやりして来て、
全てが眩しくなって綺麗になって
そして、苦痛になる。


常に脳裏に浮かぶ四文字の言葉。



いつしか夢を見る様になる。
それはとてもとても『幸せ』でとてもとても『残酷』な夢。

毎日毎日繰り返すように。



そしていないはずの誰かが見える様になる。
顔のない、見えない誰か。
でも、はっきりとそこに居る。
そこに気配を感じる。



身体の中心がヒヤリとする。
ジワジワ冷えきって、ジクジク疼く。

その感覚が薄れたら、


ぼんやり見える。


そこには確かに自分がいて、
とても落ち凹んだ瞳で何処かを見つめている。

一人ぼっちの部屋、真っ暗なそこでポツンと座る自分。

そして、その首。


その存在を主張する様に、ぼんやり青白く光を放っているそれ。

紐状の...


やがて自分の首に巻きついている紐が見える様になる。


その頃には自然と呟くようになっている。
一人で居る時、ふとした瞬間、まるで口癖のように。


『死にたい』



それまで以上に人を避けて、
少し掃除を始めたりしてみる。

ぼんやりと意味も無く、海や空を眺める時間が増える。


昔の事を次々に思い出す様になる。

そしてその歩みにまた深く絶望する。


誰も愛してくれなかった。
誰も認めてくれなかった。
誰も必要としてくれなかった。
誰もこっちを見てくれなかった。
誰も助けてくれなかった。

自分は元々いらなかった。

何の為にもがいて苦しんで、痛い思いを沢山して、ここまで生きてきたのか?


その頃には度々人を怨み、全てを悔やむ感情の波に押し潰されそうになっている。



軋む重い身体。
意味も無く溢れる涙。
呼吸が苦しい。
胸が痛い。
ぐるぐる回る頭。
喉元まで出かかった悲鳴。


耐える、耐える、耐える。



そしていつしか、
部屋から完全に出られなくなる。


ベッドから起き上がれなくなる。



しなくてはいけない事 が分からなくなる。


何も出来なくなる。



常に自分の首に紐がぶら下がっている様になる。

ぶつぶつ、聞きたくもない誰かの声がいつでも聞こえる。



ずっしり重い身体。
なのに眠れない。


やがて一つの事以外考えられなくなる。




ある晩。

真っ暗なワンルーム。

ゆらゆら動く影。

ぶら下がった自分。



もう身体は重たくない。

もう涙は流れない。



やっと、自由に......。










次の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ