黄泉の国
□あいしてる
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画面の向こう側、貴方を見つけた。
胸はときめき、眼は貴方に釘付け。
全身に電流が走ったような感覚。
じっと貴方だけを見つめ、耳に入ってくる心地いい声にずっと聴き入っていた。
とても綺麗だ。
とても美しい。
運命だと思った。
だから、僕はその日から貴方に夢中になった。
毎日毎日、寝ても覚めても、貴方の事ばかり考えていた。
沢山沢山貴方の事を調べて、沢山貴方の情報を得た。
常に貴方で埋め尽くされる頭の中。
きっと僕は世界一貴方の事を愛しているし、貴方を想う事に時間を費やしている。
貴方の事を想い続ける日々が続いて...
そんなある日、
会いたい
触れたい
ふと、そう思った。
貴方の温もりを感じたい。
貴方の感触を知りたい。
今すぐにでも。
だから僕は貴方に会いに行った。
寒さに耐えながら、じっと貴方を待って、貴方が出てきてくれた時凄く嬉しかった。
やっと会えた。
愛しい人。
直接見た貴方は画面越し以上に綺麗だった。
そのまま歩き出した貴方の後を着いて行った。
電車を乗り継ぎ、×番出口を出て右へ...
繁華街を超えて、人気のない場所へ...
公園を横切り、小さな商店の角を曲がる。
そこにはいくつかのマンションが立ち並んでいて、貴方はその内の一つに入って行った。
エレベーターに乗り込んだ貴方を見届け、上を見上げて待つ。
しばらくするとエレベーターから降りてきた貴方の姿が見えた。
そのままいくつもの扉の前を歩いていく貴方を目で追う。
貴方は一番奥の部屋の前で立ち止まった。
そしてゴソゴソした後、扉の向こうへ消えていった。
自然と口元が緩んだ。
今から会いに行くよ...愛しい人。
さっきの貴方と同じようにエレベーターに乗り込み、ポケットに手を入れてそれを掴んだ。
すぐに行くから、待っててね。
僕だけの貴方。
終